井戸

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薬漬けフェイス

8/21(日)
先週父の誕生日があったため、一週遅れで実家に帰る。無花果のショートケーキ、パイナップルとライムのパイ、レモンのミルフィーユを買って行った。父には少し重たいかな‥と思っていたけれど、案外バクバク食べてくれて驚いた。父が毎年作るタンシチューも食べる。今年は出来が良く、油っぽくないのに柔らかくて美味しかった。付け合わせの平たいスパゲティ(麺の名前が分からない)が無かったのはちょっと残念。父が煮込んだソースを平たいスパゲッティに絡めて食べるのが僕は好きだった。
数年前発覚した父の癌はこの間の検診で完治したそう。ステージ3で判明し、先は短いと言われながら手術をして闘病していたのだが、生存率15%を俺は生き延びた!とかなんとか威張っていた。僕と母も大変だったのでうるせーと思ったが、まあ、元気ならなんでもいい。

30歳になったから、と急に相続やら何やらの話をされたが、父「俺は画家で食っていくと決めてたから、祖父が養育費を援助すると言わなければ子供を作るつもりはなかった。お前は祖父のおかげで産まれた」母「お祖父さんは曾孫が見たいとか言ってるけど、あんたの好きにした方がいいよ。子供を育てるのは本当に大変だし、お腹から人間が出てくるのってエイリアンみたいだし、本当に可愛がれるかなんて分からないしね。」‥と、息子に言うべきでは無いであろう言葉が飛び交って乾いた笑いしかでなかった。僕にデリカシーが無いのはこの親の遺伝ということにしたくなる。それとも、僕が同性と交際していることに実は気付いていて、気遣いからこういう言い回しをしているのだろうか?(だとしても不器用すぎる)
うずまき(猫)は階段を降りた辺りの廊下の床が気持ちいいらしく、ずっとそこに寝そべっていた。2階だとクーラーが当たりすぎるし、1階のリビングは暑いんだろう。


8/22(月)
午後休で13時にオフィスを出て、初めて髭脱毛に行った。恋人が2ヶ月前から通っていて(彼は元々髭が薄く、ほとんど生えていないように見えるのだが)紹介だと安くなるというので、僕も行ってみることした。顎は髭を生やしているのだが、前から頬を脱毛したいと思っていた。極端に肌が白いため、剃ったあとの頬の青髭が普通の人より目立ってしまうのだ。
1時間麻酔を浸透させた後、処置室に案内される。仕切りで個室風に区切られた椅子だけの空間に、麻酔中の男たちが横並びで座っている状況はシュールで面白かった。施術中は目隠しをされるため、何をされているのかあまりよく分からないが、「痛い」と言うと弱められて効果が出ない気がしたのでひたすら我慢した。と言っても、照射される瞬間に体がビクッとなってしまうためバレバレで、そんな自分が滑稽でまた面白くなってしまった。髭が生えるサイクルというものがあるらしく、少なくとも半年は通わないといけないらしい。剃らなくても良くなるならラクでいいな。施術を受けるまでは、脇やちん毛(完全にパイパンにするつもりは無いが少なくしてもいいかなと思っていた)も脱毛してしまおうかと思っていたが、そこそこ照射されるのも痛かったため、とりあえず顔だけでいいやと思った。

そのあと住民票を取りに行く。いい加減、怠惰していないでマイナンバーカードを作らないとと思う。だけどこういう全ての手続きが煩わしい。仕事してるだけで褒めてほしい。


8/23(火)
17時に退社して歯医者へ。親知らずを抜く。なぜ脱毛の次の日に親知らずを抜く予約を入れてしまったのか。顔を酷使しすぎている。退社する時、仲の良い先輩と鉢合わせて「どこかお出かけ?」と聞かれたので「親知らずを抜きます」と答えると「アチャー憂鬱だね」と脅された。やはり腫れるのだろうか。隣駅の歯医者に着くとすぐ中に通された。普段見ない医者(多分抜歯専門の人なんだろう)がテキパキと麻酔をしてくれる。昨日は外側の麻酔をして、今日は内側の麻酔。顔がおかしくなっちゃったりしないだろうかと急に不安になった。

「じゃ、ちょっと押すね」と言われ歯に圧がかかる。痛くは無い。ミシミシッ‥という音がかすかに頭の奥で鳴った。3秒ほどして、「はい、抜けました。」え?今のでもう抜けたの?歯が?医療の発展すごすぎる。木の枝を折るような音がしただけで終わった。既にサイドテーブルには、血まみれの、絵に描いたような形の歯が転がっていた。あれが僕の口の中にあったのか〜なんてぼんやり思っているうちに上の歯も抜かれ、終わり。本当に呆気なかった。サッと帰されそうになったので折角だし‥と思い、「その抜いた歯、ください」と言ってみた。小さい歯の形のケースに収められ渡される。先輩、どこが憂鬱なんですか!と思ったけれど、そのあと看護師に「きれいに生えてたから簡単に抜けましたね」と言われた。なるほど。来月反対側も抜く予約をして医院を出る。まだ麻酔で顔の半身がおぼつかないが、気持ちがザワザワしていたので喫煙所で煙草を吸った。周りの人から「親知らずを抜いた直後の人間」であることが気付かれないか‥?と謎の勘ぐりをして余計にザワザワしてしまった。


8/24(水)
仕事で芝山さんを呼んでの撮影だった。先週もお願いをしていて、結局丸々2日間かかってしまったが、いい感じに撮れてそうだったので芝山さんにお願いして正解だった。昨日親知らずを抜いたところは全く腫れる気配が無く、「昨日親知らず抜いたんですけど‥」という話をするたびに驚かれた。アシスタントの方は午後別件があるということで一足先に帰ってしまい、昼食は2人でカツを食べた。食べながら旅行に行きたいですね、という話をする。金沢に引っ越した僕の友人のところに行くのもアリ、という話になった(芝山さんと友人はスペースで一度話したことがある)が、折角なら寝生活さんと3人でまた旅行したいですよね、と盛り上がった。大阪のfutouに行った時はかなり弾丸旅だったけど、今思い返してもとても楽しかった。寝生活さんはちょっと今調子が悪そうなので、元気になったら計画を立てましょうということで話はまとまる。金沢に新幹線で行って、芝山さんはそのまま写真を撮る旅をしたいとのこと。いいな、それ楽しそうだな。17時頃に芝山さんを見送ってから、3件仕事の打ち合わせをした。

仲の良い先輩が9月1日付けで正式に異動になってしまうため、ご飯に誘うメールを送ってみた。今更変に形式張るのはなんだか恥ずかしいな、と思って躊躇っていたのだが、あっさりOKの返事が来る。前にも日記に書いたかもしれないが、大学生の時に読んだ「人は誘う人が3割、誘われ待ちの人が7割。だから誘う側の人がいつも得をする」という文章がまた頭をよぎった。誘われて嫌な人なんてそうそう居ないし、断ったって別にいいんだから、きっかけを作ることの方が大事なんだろうと思う。大学生の時にあの文章を読んでいたおかげで前向きに行動できたタイミングが、僕には結構あると思う。


8/25(木)
この日は朝からずっと打ち合わせの連続だった。最後の打ち合わせの前1時間で、作りかけだったデザインを仕上げる。いい案がなかなか浮かばなくてめちゃくちゃ冷や汗をかいたが、打ち合わせまで残り10分の時に付け足して作った案がチームにウケて、その方向でまとまった。追い詰められるとなんとかなる。ひとまずうまく行きそうで安心した。

19時過ぎにオフィスを出て、そのままチームで飲み会。僕は仲の良い先輩から仕事を引き継ぐ形でこのチームに入ったので、このメンバーでの飲み会は初めてだった。5年目の企画の女の子に「井戸さん出身どちらなんですか?」と聞かれて答えると「私の仲良い同期もその辺り出身って言ってました!」というリアクションが返ってきて、話を続けていく内に、めちゃくちゃ家が近く、かつ僕の高校の同級生の妹が彼女の同期だということが発覚した。世間は狭い。僕の高校時代の痴態がバレるのは恥ずかしかったので、「それはここだけの話に‥」とお願いしておいた。性格のイイ子だから多分大丈夫だろう。このチームは年が近い人も多く、普段からしょっちゅう顔を合わせているので飲み会はとてもラクだったが、やはり4人くらいを超えると飲みながら会話するのは難しいな〜と思った。後半はほとんど聞き役に徹してしまった。3年目の男の子は僕の隣駅に住んでいたので一緒に帰る。ディズニーランドでバイトをしていた‥という大学生時代の話をいろいろ聞いて、知らない世界があるもんだな〜と思った。