井戸

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ヌガーグラッセ

0724(日)

ヌガーグラッセが楽しみで6時に起きてしまった。
昨日の夜、恋人がブレンダーをプレゼントしてくれた(25日で僕が30歳になるからだ)のでYouTubeのレシピを見ながら2人で作り、冷凍庫で冷やしていた。寝てる恋人を起こして早速「食べよう!」と誘ったけれど「8時までは寝かせて‥」と相手にしてもらえず。結局、シャワーを浴びたり部屋でくつろいで時間を潰した。彼が起きてきてから朝食を作り、ようやくヌガーグラッセ開封。見た目完璧。スプーンですくう。ウマ〜〜〜!食感ばっちりで嬉しい。ドライフルーツの代わりに入れた冷凍のブルーベリーと苺、酸味がベストマッチして大正解だった。アーモンドとピスタチオを沢山入れたのも良かった。残った苺を潰して作ったソースも美味しくて、これからブレンダーを使ったら色々な料理が出来るね。と2人でワクワクした。(僕はともかく、彼はこういう道具をしっかり使いこなすマメなタイプだ)

日比谷線に乗って出光美術館へ向かう。板谷波山展。先輩が「今、井戸くんが作ってるデザインにかなり参考になると思う!」とおすすめしてくれた展示だ。

参考どころか。めちゃくちゃ良かった。先輩に感謝の気持ちでいっぱいになる。植物の紋様が描かれたり彫り込まれた陶器の数々。葉の翻り方など、写生のように生き生きとしているにも関わらず、柄として「あって欲しいところ」にかっちりはまっている。隙がなくレイアウトされていて、細部まで行き届いた緊張感が美しかった。パキッと輪郭を出すのではなく、滑らかに、ぼんやりと浮かび上がっているのもかなり植物らしい。真っ白に釉薬が塗られた壺は、葉の欠落や虫食いが模様として昇華されていてものすごく見応えがあった。更に、一緒に展示されたスケッチもかっこいい。繊細なのに勢いもある描かれっぷりについ見入ってしまい、感化されて僕も絵が描きたい!気分になった。恋人も彼なりに展示を楽しんでくれていたようで、「俺はこれがお気に入り♪」とか「この作者ってこんな人なんだね」と感想を漏らしていた。僕よりしっかり解説を読んでいるようだった。図録がたった2500円で信じられない!となる。即買った。

強い日差しの中、皇居沿いを歩く。途中いくつかのホテルのエントランスにふらりと入り込んで散策をした。レストランで優雅なランチを食べている宿泊客、あるいは結婚式の招待客たち、恐らくマッチングアプリで会ったであろうソワソワした男女たちなどを眺める。高級ホテルのトイレや喫煙所を覗くのも楽しかった。彼はこういう「生活を覗き見」したがるところがとても良い。僕にしか聞こえないような、ごく小さな声で、とてもここには書けないような毒を吐き散らかしていた。

皇居の中を抜ける。こんな暑い日にわざわざ皇居を歩いているのは僕らくらいしかいなかった。空が開けていて、木が風に揺れる。彼は350ml缶のC.C lemonを自販機で買って、喉を鳴らしながら飲み干していた。道沿いに一本一本違う種類の木が植えてあり、丁寧にひとつひとつ立看板が立っていた。ウメ‥マツ‥ケヤキイチョウ‥という具合に。東京の本丸にいながら「なんだか東京じゃないみたいだね」と話しているのが可笑しかった。出口に居た警備の警察官に、彼が背後からこっそり近づいて同じポーズを取る。僕はすかさず写真を撮る。警察官は全く気づいていない様子で、平和な時間が流れていた。

近代美術館、ゲルハルト・リヒター展。なかなか混雑していた。良い展示ではあったけど、一箇所自撮りスポットになっている場所があって、それに少し萎えてしまった。作品の鑑賞の仕方は人それぞれだけれど、なんだかな〜なんて思ってしまうのは僕が古い思考なのだろうか。写真に足りないものを描き足し、足りすぎているものは削ぐ(あるいは描くことと写すことを逆にする)作業がシームレスに行なわれていて、具象に見えるのに抽象的に思える・抽象に見えるのに具象的に思える感覚がとても面白かった。(面白いと言うには語弊があるくらいの重量も伴っていた)4階にある「眺めのよい部屋」で少しぼうっとして写真を撮る。皇居の周りに植えられた木の影が、雲の流れに合わせてゆっくり、濃くなったり薄くなったりしていた。

ミッドタウン日比谷まで電車で戻り、天ぷら蕎麦を食べる。「誕生日なんだから君が食べたいものを食べよう」と彼は言ってくれたけれど、どの店も並んでいたのですぐ入れる蕎麦にした。待つ間にイライラし出す予感がするくらいには空腹だった。左も右も前もカップルだらけ。僕らも一応はカップルだけど。左前に座っている20代前半の男は女に喋る隙を与えないくらいひたすらに喋っていた。

ミッドタウン日比谷には何にも無かった。いつもそう。何かあるかな?と思って入るけど、結局何にも惹かれ無い。展示を2つ観て、沢山歩いて汗もかいたし、蕎麦が意外とボリューミーで腹はくたびれていた。真っ直ぐ帰宅し、シャワーを浴びる。さっぱりしてめちゃくちゃ気持ちいい。本当はセックスしたかったけど、疲れが勝ってそのまま2人とも寝てしまった。19時頃、Ubereatsでカレーとナンを頼んで食べ、今朝残しておいたヌガーグラッセもペロリと平らげた。仕事しなきゃな〜と頭の片隅で思いながらも、「明日の朝やろう。」と放棄。彼のシングルベッドで一緒に寝た。

もっと書き残したいことがあったかもしれない。色々なことがあって忘れてしまった。買った図録はまだ読んでいない。今日沢山撮った写真を現像すればまた何か思い出せるだろう。20代最後の日だった。