井戸

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母の手料理×2

0703(日)

大学の同級生から、子供が産まれたと写真付きのLINEが来た。クラスメイトだったけど4年間で遊んだのは2.3回程度(1クラス20人、1学年60人の学部だった)で、そんなに親しいという訳でも無かったので返信に困る。結婚式に呼ばれた時も居心地悪かったのを思い出した。赤ちゃん、写真を見ても特に可愛いと思えない。気の利いた返信が思い浮かばず、しばらく頭がフリーズしてしまった。

11時半に家を出て実家に帰る。電車を乗り継いで1時間ちょっと、最寄り駅から車で40分。家の周りは山と川しかないド田舎だが、時間で考えるとそんなに遠くはない。
玄関を開けると猫が廊下に寝そべっていた。隙だらけの怠惰ポーズでお出迎え。床が冷たくて気持ちいいんだろう。エアコンの冷気が苦手で、日中は2階ではなく1階の廊下に寝ることが多いらしい。先日父が風呂に入れたばかりだそうで、ふわふわと良い匂いがした。母が作ってくれていた昼飯は大根の煮浸しと炊き込みご飯、卵焼き。この薄味が母の味だ。

食後。キッチンで煙草を吸う。元々はヘビースモーカーの父から勧められて僕も吸い始めたのに、父は癌になってから煙草をやめ(当然だ)、この家で吸うのは僕だけになっていた。キッチン越しに今日の予定を話す。父が9月に銀座で個展を開くため、その作品を梱包するのが帰省の目的だった。会場の見取図を見ながら、どこにどの作品を展示するか3人で相談する。父の新作は昨年岩手で個展した時よりも格段に良くなっていた。絵のような、写真のような仕上がりは見応えがあるし色彩もきれいで、過去の父の作品の中で一番好きだと思えた。作品を選んだり、DMに載せるテキストの校正をする。普段の週末よりも帰省した週末の方が仕事っぽくなるのが可笑しい。父は度を超える亭主関白で、母の意見は聞かないのに僕の意見には耳を傾けるため、僕は逆に母の肩を持ちながら話す。昔はそんなことなかったのに(というか昔はもっと崩壊していた)一人息子が2人の関係のバランスをとっているなんて変な家だなと我ながら思った。

煙草が無くなったとぼやくと、母はわざわざコンビニに行こうと車を出してくれた。母は母でとんでもなくマイペースな人で、絵を描いたりゲームをしながら、うまく父のペースに巻き込まれるのも楽しんでいるようだった。

父のアトリエで1.5mほどある作品を12枚梱包する。プチプチを敷いて段ボールで作品を挟み、四隅に緩衝材を噛ませる作業を母に指示出ししながら黙々とこなした。途中、父になんか痩せたね?と言われる。最近会社でも言われたから、本当に痩せたのかもしれない。父は今回の作品作りのために100万弱のカメラを買って以来、ガジェット系YouTuberを見るのにどハマりしていた。溜めに溜めた知識が滝のように口から流れ出ていて、僕と母は適当に相槌を打つ。会社で沢山の大人と触れ合うようになったからか父の子供っぽさをより実感するようになったけど、これが我が家っぽくて、不思議と心地はよかった。

17時に実家を出て家に帰る。恋人が夕飯の支度をして待ってくれていた。この日の晩飯は彼の母親の仕送りご飯で、1日の内に2人の母親の手料理を食べる日となった。トマトハンバーグ、鮭フレーク、肉団子、冷麦、茄子の煮物などをタッパーから少しずつ出して食べる。僕の母とは違ってしっかり味だし、香辛料か何かの凝った味がする。彼の母親には会ったこと無いが、僕が好きだ!と彼に言ったメニューが続投されていて、僕がいることを意識したラインナップになっているのを感じた。

彼は美容室に行ったりサウナに行って日曜日を過ごしていたらしい。一緒にYouTubeを見てから少し仕事をこなして、23時頃に寝た。